生き残った帝国ビザンティン (講談社現代新書)



生き残った帝国ビザンティン (講談社現代新書)

ジャンル:歴史,日本史,西洋史,世界史
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古代帝国の中世的再生を活き活きと解説

 テオドシウス1世の死により東西に分裂したローマ帝国。西ローマは民族移動の大波に呑まれるかの如く5世紀後半に滅亡の日を迎えますが、東のカウンターパートは、ビザンティン帝国として猶一千年もの歴史を刻むこととなります。古今東西、人類の歩みの中では様々な国家や政治権力が成立しましたが、これほどまでに長い命脈を保ったものは極めて希です。それを可能としたカギは何処に求めるべきでしょうか。
 本書は、そうした問題意識を下敷としつつ、コンスタンティヌス大帝の改宗と遷都から筆を起し、この帝国の長いながい歴史をコンパクトに、そして平易な語り口で概説するものです。ユスティニアヌス1世、バシレイオス2世、アレクシオス1世、そしてマヌエル2世など、帝国治乱興亡の立役者となった幾人かの皇帝の治績を中心に筆を進めていますが、中央政権と貴族層との関係の推移、農村共同体の変容とそれに伴う軍隊の質的な変化などにも適宜触れることにより、社会・経済的な面にも然るべく光を当てています。全体として、古代以来の老帝国が時代の推移に応じて中世的な政治権力に変貌しながら発展を遂げ、やがてまた、社会的条件の変質と安全保障環境の変化の中、衰亡に向かわざるを得なかった様が活き活きと描き出されています。
 本書により、ビザンツ一千年の寿命の秘密が明らかになったか否かは、読者がそれぞれに判断すべきことと思いますが、小生としては、本書の内容は問題意識をしっかり反映しているように思います。
 既に絶版になった模様で、入手しにくいこととは思いますが、ビザンツ史の入門書として、手頃で実に優れた一冊だと思います。
「ローマ人の物語」シリーズがそろそろ終わることをご心配の方へ。

心配の必要はありません。東ローマ帝国の1000年の歴史もなかなか捨てたものではありません。キリスト教化されたとはいえ、そして実質的にギリシャ人の帝国であったとはいえ、1000年の間にそれなりに自己改革を行いながら、東西の文明の衝突する地域を1000年も生き残ることのできたこの国の興亡史が面白くないはずはありません。そして、この本は、その面白さをわかってもらおうと、色々なエピソードを交えてこの国の歴史への愛を語る作者の思いが伝わってくる力作だと私は思います。

作者はローマ帝国末期のコンスタンティン大帝の時代から筆を起こしますが、コンスタンティノープル建設にまつわるエピソードなどは、このあたりの記載があまりにもあっさりしすぎていた「ローマ人の物語 XIII 最後の努力」に不満を持った人にも満足のいく興味深い話を補ってくれます。何よりも作者のこの都に対する愛情が感じられます。

追記2008年3月21日:朗報です。本書は本年3月、文庫版として復刊しました。
ビザンツ史入門書


ビザンツ帝国というと研究の立ち遅れから日本ではマイナーな感じもあるが、本書でも再三述べられているとおり、当時はかなりの先進地域であった。それは西欧においてカール大帝やオットー大帝ですら、ビザンツ帝国の顔色を伺いながら自らの地位を築いていったことからも伺える。本書は、そんなビザンツの盛衰を、帝政ローマ期のコンスタンティヌス大帝の改宗・建都から1453年の帝国滅亡まで網羅した秀作といえよう。ビザンツ史を学ぶものにとってはもちろん、広く中世の歴史に興味を持つ人には必読の書である。
ただ一点、帝国の範囲が流動的であるがゆえに、私のような地理感覚の疎い読者には想像し難いところもある。もう少し地図を増やして欲しかった。
読みやすいビザンティン帝国史

ローマ皇帝コンスタンティヌス一世がキリスト教に改宗し、首都をローマから黒海と地中海を結ぶギリシャ植民都市ビザンティオンをコンスタンティノープルと名を変えて移したことから、この大帝国は新たな局面を迎えた。やがてローマ帝国は東西に分断し、西ローマ帝国は崩壊し、やがてラテン語・カトリック世界となる。東ローマ帝国はビザンティン帝国に変貌し、ギリシャ語・正教世界として独自のキリスト教世界として発展していく。専制国家ビザンティンは、東からの新しく勃興したイスラーム勢力、そして西から来寇した狂信的な十字軍と死闘を繰り広げながら、1453年に滅亡するまで長い間、独自の文明・文化を発展させて来た。実際ビザンティン帝国は実質的に「ギリシャ帝国」である。本書は日頃、西欧に目を向けがちな日本人に分かりやすいように、後に東欧、ロシア、トルコ、アラブなどに影響を残したビザンティン帝国の通史として手頃なものである。
very interesting book

新書版のビザンティン史が幾つか出ていますが、そのなかでは本書が最も手際よくまとめられていて、面白く読むことが出来ました。ただ前半部に紙数を割きすぎたせいか、プセロスの史書に登場する興味深い人物、就中ミカエル3世と彼のあとを継いだバシレイオス1世との男色的関係などに触れられていなかった点が残念です。またビザンティン帝国で活躍した「宦官たち」に関する言及が乏しいことも、やや心残りの感を否めません。 とはいえ、忙しくて時間のあまり無い人や手短にビザンティン史の概略を知りたい人にとって本書はうってつけの作品と申せましょう。



講談社
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