生きのびる―横浜異人街事件帖 (文春文庫)



生きのびる―横浜異人街事件帖 (文春文庫)
生きのびる―横浜異人街事件帖 (文春文庫)

ジャンル:歴史,日本史,西洋史,世界史
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いろんな意味で寂しい

昭和62年「海狼伝」の、若々しく、荒々しく、はつらつとした作品から数え、17年。
平成16年9月に、白石は享年72才にて、その生涯を終えた。
本作品は、平成16年3月に刊行されており、白石の最後の作品となった。
初期の海をテーマにした海洋時代小説という新ジャンルを切りひらいた、ある意味気負った、独特の作風から、本作は晩年の作品らしく、ある種の円熟味、しっとりと人生を語る、人への優しいまなざしが随所に見られる。
幕末の動乱期を題材にしながら、どこかそのような激動と少し切り離された感のある横浜。そういえば、時代物で、この横浜が題材にされたことはきわめて珍しい。
現在では、同じ異国情緒の香る長崎が、幕末期には激動の先端にあったのとは、意外なことに横浜は違ったようだ。

しかし、そんな横浜は、一方で異国に開かれ、異人たちが闊歩する街でもあった。
そんな、どこか無国籍な、そして時代にちょっと外れた、夢見心地の市井の人たち。
晩年の白石は、実におもしろいところを題材に選んだものだ。
初期の破天荒で、まぶしい海と違い、落ち着いたまなざしの描く幕末の港町横浜は、ドラマもあり、活劇もあるが、何となく寂しい。




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