正史 三国志〈6〉呉書 1 (ちくま学芸文庫)



正史 三国志〈6〉呉書 1 (ちくま学芸文庫)

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演義では味わえない呉の魅力

晋代の史家・陳寿による、いわゆる"正史"『三国志』.
完訳はこのちくま版(全8巻)しか流布していないはずだから、三国志好きならば必ず入手したいところ.
原文・書き下し文がないのは残念だが、官職表や人名索引がおそろしく便利なので、手元に置いておくと最高の資料集になる.

ところで『三国志』を読み物としてみた場合、もっとも面白いのは6〜8巻にあたる「呉書」といえるのではないだろうか.
「蜀書」の劉備たちは言うに及ばず、「魏書」の曹操らについても吉川英治の『三国志』が既にかなり魅力的に描いてしまっている.
その点、正史を基にした陳舜臣『秘本三国志』においてすら冷遇されている孫策ら呉の面々は、この「呉書」を読むことではじめてその本当の価値が見出されるようである.

董卓を破ったただ一人の男・孫堅、その後を継いだ――というよりもむしろたった一人でどん底を這い上がっていった小覇王・孫策、言い知れぬ深みを感じさせる皇帝・孫権.
周瑜の実像は演義よりも物語的だし、魯粛のブチ上げる先見的な国家戦略には度肝を抜かれる.「男子三日会わざれば…」の呂蒙が死の床にある場面などは司馬遷もかくやという悲劇の趣.
頑固ジジイ張昭と孫権の大喧嘩から、陸遜の子・陸抗が指揮する芸術的な「西陵の戦い」まで、「呉書」を読まねばお目にかかれない魅力的な記述が山ほどある.

「別に歴史の知識は要らないんだけど…」という人も、この6巻から始まる「呉書」は是非手にとってみて欲しい.単純に読み物として楽しめるはずだから.
また正史『三国志』を読み進めていく上での取っ掛かりとしても、「呉書」はちょうど良い入門編になるのではないかと思われる.



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